養老軒の素材の旅

鮮度の高さで信頼を寄せる地元産

岐阜県美濃加茂市 栗

丁寧な作業で色と食感を生かす

秋の訪れをいち早く告げる栗のお菓子。養老軒にとって栗は、大切な副材料の一つです。

鮮度が大切なだけに長年信頼を寄せているのが、美濃加茂市を中心にしたJAめぐみのから直接仕入れる地元産。届いた栗は一定の温度で保存し、甘みを増幅させます。そしてじっくりと蒸し上げた後、中身をかき出します。

粗めに砕く昔ながらの加工は、養老軒の特徴でもあり、栗本来のほくほくとした食感と甘さを引き立てます。そして最後に、箸を使って変色や鬼皮のかけらを選り分けます。

そのほとんどが気が遠くなるような手作業ですが、こうした工程が栗菓子のおいしさへとつながり、栗きんとんをはじめ、多彩に形を変えて様々な菓子へと生まれ変わります。

日照時間が長く、最適な土地柄

和栗といわれる品種は、100種類以上もあるとされ、日本各地で栽培されています。栽培の盛んな岐阜県で技術研究や品種改良が進み、東濃地方を中心に広がり、日照時間が長く、適度な雨量のある中濃地域では、30年ほど前から丘陵地を中心に栽培が始まりました。しかし近年は、急激な住宅地の造成で栽培がしづらくなったことや、後継者不足で担い手が減り、JAめぐみの管内で栗を出荷するのは、わずか200軒と減少しています。

同市の栗農家、日比野学さんは先代から受け継いだ国道21号線沿いの約3000平方メートルで栗を栽培しています。今の町並みからは想像できませんが、かつて丘陵地だったこの地域は、かいこのえさとなる桑の葉を栽培する養蚕農家が多く、日比野さんは、酪農を営んでいましたが、20年ほど前に栗栽培へと切り替えました。

栗は品種それぞれに早生と晩成種があり、長い収穫期を確保しながら、安定的な収量を目指して作付けしています。1本の苗木では、結実しない特性があり、3品種以上を混合して植え付けます。日比野さんの畑では、筑波や大峰、ポタロンなど風味や大きさの違う6品種を育て、希少な和栗として知られる利平栗は、成木期となる15年目を迎え、巨大で鋭いいがの中からつやつやでふっくらした実をのぞかせています。

いがの中には通常1−3個の栗の実が入り、弾けて落下した実を収穫しますが、生育途中に縦割れを起こしたり、虫食い跡が生じたりして完璧な実は、なかなか入りません。収穫期は、台風時期と重なることから、成熟する前のしぼんだまま落下することもあり「味に問題はなくても、等級が落ちてしまいます」と日比野さん。

岐阜県は、低く剪定して横に広がるように仕立てることで作業効率を上げ、実に太陽をたくさん浴びさせ、良質な栗を安定的に収穫できる独自の低木樹高栽培を勧めてきました。そうした甲斐もあり、安定した収量を確保できるようになり、栗きんとんは岐阜県のお菓子の代表的な存在にもなりました。

養老軒自慢の栗のお菓子たち

栗きんとん大福

養老軒にとっても、不動の人気を誇る栗のお菓子。栗きんとんをはじめ、ほくほくの利平栗が出回る頃にあんカフェで販売する栗粉餅など、栗を主役にしたお菓子は幅広いラインナップ。優しく素朴な甘さでお菓子を引き立て、密やかに主張する栗の存在感。栗のお菓子を頬張ると、心の中にゆっくり、秋の気配を運んできます。