養老軒の素材の旅

禁断の果実?誘惑を含んだ甘い香り

愛知県西尾市 イチジク

旧約聖書のアダムとイブが、裸を隠すのに使ったとされるイチジクの葉。原産地のアラビアから広く世界中に伝わり、日本には江戸時代、長崎を経由して広まりました。ねっとりとした独特の甘みと香りは、お菓子やドライフルーツだけにとどまらず、料理を引き立てる主役級へと押し広げる果物です。

漢字で表記すると「無花果」。花を咲かさないわけではありませんが、花は実の中に隠れて咲き、果肉の中の食べるとプチっとする小さな粒状の食感は、花から生み出されている不思議な果物です。

三河地方の温暖な気候と豊かな水源

養老軒が使うイチジクの主な産地、愛知県。その生産量は、全国シェア20%にも上り、温暖な気候に豊かな水利が適した西三河地域を中心に1960年代から生産が拡大しています。西尾市では、8−11月と比較的長く出荷する露地イチジクと春から夏にかけて出荷されるハウスイチジクが栽培されています。

取材で訪れた同市吉良町のタスクファームは、小高い斜面に広がる畑で主に露地イチジクを生産しています。海岸線に広がる吉良地域は、冬から春にかけて温暖で凍害が少なく、比較的雨が少ないために安定した収穫ができます。栽培している品種はこくのある甘さで大粒な「桝井ドーフィン」とさっぱりした甘さの「サマーレッド」の2種類。

訪れた6月。青い実をつけたゴルフボールほどのイチヂクがたわわに天に向かって突き出ていました。普段、民家の軒先などで見るような大きな枝を羽ばたかせる樹木とは違い、背丈は160cmほどでまっすぐきれいに伸びています。

代表の井土和之さんによれば、主枝2本を左右に平行に伸ばして、母枝を一定感覚に発生させて、垂直に誘引する「一文字整枝」の栽培法が確立され、たくさん光を浴びて、赤く色付かせることができると言います。高さが統一されているため「日光を遮る葉を切り落としたり、収穫作業がしたりしやすい」こともメリットで、実のなる枝が倒れて、日当たりが悪くならないよう棒で支えてまっすぐに固定しています。

デリケートな果物なため、強風で葉がこすれて実に傷をつけたり、春先の遅霜が木の成長を妨げたりなど1年を通じて、管理が欠かせません。水分は土を乾燥させないようにパイプで地中に運び入れ、管理します。甘い実のなる頃にはハクビシンやカラスが侵入してくるため、最近は周囲を覆う青いネットが欠かせません。

イチジクはバナナのように収穫後に甘くなることはないので、赤く色づいて熟したベストのタイミングを見極め、出荷し、すぐに消費者の元へと届けられます。

マスカルポーネと栗の斬新な組み合わせ

年々人気が高まり、イチジク好きのファンが熱望する「いちじくのミルク栗きんとん大福」。濃厚なイチジクのおいしさを大福で再現するために試行錯誤してたどり着いた斬新な味わいの一粒です。

残暑を迎える頃になると、西尾産をはじめ、愛知県各地から熟した実が届きます。

完熟のイチジクを皮ごとふわふわの餅で包み、中にはホイップクリームとマスカルポーネチーズを加えたなめらかな栗きんとん。ラム酒が香る贅沢な味わいは、洋菓子のようでもあり、淡い甘さの果肉が和洋感覚をまとめます。

古代から世界中で愛されてきたイチジク。禁断とも言える果実を包んだ大福をアダムとイブが口にしたならー。そんな想像をするのも楽しくなる魅惑的なスイーツ。西尾の海風と陽光をいっぱい浴びて、今年も極上の一粒が届くに違いありません。

いちじくのミルク栗きんとん大福」商品ページはこちらから。